第140章(1 / 1)
「赤ちゃんのせいにしてるけど、ただ芽衣が食いたいだけだろ? アハハッ」
「そうとも言うけど……。ヘヘッ」
アッくんの隣に行き、空いていた左手を握る。
今日もあたたかくて優しさが伝わってくるアッくんの手。
触れ合う手のひらだけじゃなく、胸の奥まであたたかくなる……。
赤い糸precious アタシたちは手を繋いだまま、カフェの外に出た。
「今日も天気いいな。ちょっと歩くか?」
「うん、散歩しよう」
「こうやってふたりで手を繋いで歩けるのも、あと少しだもんな。子供が産まれたら、オレらの真ん中に子供が来るだろ?」
アッくん、赤ちゃん、……アタシ。
家族3人で手を繋ぐ光景が目に浮かぶ。
それは、幸せを絵に描いたようなあたたかい家族。
「そういうの憧れてたんだっ。真ん中にいる子供が、ジャンプしてパパとママの手にぶら下がったり……。でも、いざそうなったら、ちょっと寂しいかもね。子供はもちろん大切にしてほしいけど、アタシのことを忘れちゃ嫌だよ?
ヤキモチやいちゃうからねっ」
「子供にヤキモチ!?
バカだなぁ……」
「バカじゃないもんっ。
赤ちゃんが産まれて忙しくなっても、寝てるときは、今みたいに手を繋いだりして、アタシだけのアッくんでいる時間をつくってね」
「わかったよ」
アッくんは周りを見渡して人がいないことを確認してから、包み込むようにアタシを抱き寄せてくれた。
胸の中からは、いつものイイ匂いがして……。
「アッくん、大好きだよ」
思わず、心の声が唇のすき間から漏れてしまった。
アッくんはアタシの気持ちにこたえるように、クシャクシャッと頭を撫でてくれた。
「なぁ、家に帰ったら、腹触らせて?」
「うん。ていうか、今触る?」
「今はいいよ、人が来ちゃったし……。
もう行くぞ」
アッくんは、アタシの体に回した手を離すと歩き出した。
「ちょ、ちょっと! 待ってよー」
「早く来いよっ」
アタシは慌ててアッくんの背中を追いかける。
いつもはすぐに距離が開いて、小走りをしなきゃ離れてしまうのに、今日は歩いてるだけですぐに距離が縮まって、手を繋ぐことに成功した。
アタシに合わせた、ゆっくりと小さな歩調で歩いてくれるアッくんの思いやりが、何も言わなくても伝わってきた――
赤い糸precious precious
愛する人とともに生き、
ともに人生のページを1枚1枚めくっていけることは、
すごく幸せなことなんだと思う。
愛する人と過ごすだけで、
何気なく過ぎていく1秒1秒が輝きを放ち、
かけがえのない想い出になっていくの。
半年後には新しい命が誕生して、
さらにその輝きは増すんだろうな。
もちろん、
時には苦しみ、
悩むこともあるだろうけど、
アッくんとなら乗り越えていける。
アタシたちには強い絆があると信じてるから。
苦しくても、
それ以上の大きな幸せの瞬間がある限り、
きっと何があっても大丈夫だよね。
手にした幸せが、
指のすき間からこぼれ落ちてしまわないように、
強く強く握り締めて、
大切にしていきたい。
ねぇ、アッくん。
この命の灯火が消えて途切れてしまうまで、
ともに歳を重ねながら、
たくさんの想い出をつくっていこうね。
幸せな笑顔を、
決して色褪せることのない心のアルバムに刻み込
んでいこう。
……アタシ、産まれてよかった。
いろいろなことがあったけど、
今は心からそう思える。
アタシたちの赤い糸は、永遠に切れることなく、
ふたりを結びつけるだろう。
5年経っても、10年経っても、50年経っても……、
アタシはアッくんを愛してるよ。
いつも、ありがとう。
これからも、よろしくね。
終わり
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